関西圏では木曜日から授業が再開するそうで、首都圏はどうなるのか気になるところです。もっとも5月末までは現状のままなのが告知されているので、再開するとしても6月頭からでしょう。
一教室に20人弱の子どもたちが集まる対面授業は難しいように思います。どうなるのでしょうか?
さて、今回の解法メソッドは表現の工夫からニュアンスを読み取るというものですが、小学生には高度過ぎませんか?まだまだ慣用表現と気持ちの言葉も対応させられたものが少ない状態で、表現上の工夫→ニュアンスという変換は少なくとも我が娘には難しすぎます。それも一因となって今回の問題は客観問題のみであるにも関わらず酷いものでした。まあ、このテキストは本業の方で昨年、一昨年も指導しており難しいのは知っていたので驚きはしませんでしたが。
以上から今回の解法メソッドについてはあまり気にしないことにします(笑)。これに関わる問七も難しいですし。これよりは文章テーマの方が大事かな、と。今回の文章テーマは「かつての日本の風景」と題して、時代背景の古い文章を扱っています。似たものとして文章自体が古いという問題もありますが、子供にとっては差が分からないことが多いのでそれほど気にしなくても良いかも。時代背景の古い文章は渋幕、フェリス、攻玉社などが好みます。かつては麻布もですね。GSの「やまびこのうた」、「なめとこ山の熊」、「甚平とじさま」などは大昔の麻布の過去問だと思います。過去の入試問題を調べてみると
2017年入試で出題された昔の文章
川端康成「めずらしい人」(渋幕)
下村湖人「次郎物語」(フェリス)
大倉桃郎「我が父強し」(攻玉社)
2018年入試で出題された昔の文章
芥川龍之介「死後」(渋幕)
山川方夫「煙突」(フェリス) ※山川方夫はWS-05一「Kの話」の作者。
田山花袋「日蝕の日」(攻玉社)
2019年入試で出題された昔の文章
寺田寅彦「天災と国防」(渋幕)
徳田秋声「初奉公」(攻玉社)
寺田寅彦「科学者とあたま」(雙葉)
井上靖 「しろばんば」(開智)
2020年入試で出題された昔の文章
三島由紀夫「豊饒の海」(渋幕)
井上靖 「篝火」(フェリス)
新美南吉「久助君の話」(東洋英和A)
井上靖 「一座建立」(東洋英和A)
久米正雄「金魚」(攻玉社①)
などが挙がります。東京・千葉ですと渋幕を志望する場合、ある程度慣れておいた方が良いと思います。神奈川ならフェリス。攻玉社についてはそれほど対策をとらなくても普通の読解力で取れる感じですね。
前書きが長くなりましたが、今回分の解説に行きます。出典は木山捷平「尋三の春」。この文章は久留米付設中で別の部分の出題がありますが、首都圏でも出ているんでしょうか?木山捷平の作品では「うけとり」が西武文理、「おじいさんの綴方・河骨・立冬」が東邦大東邦で出題されています。

ちいさこべ・山月記 (少年少女日本文学館17)
問一 線部延長すると、「ひばりは空で鳴いているし、桃の蕾は岡の畑でふくらんでいるし、私の心は[ ① ]」となります。「~し」で連結した部分がプラスの情景描写なので、それに続く「私の心」もプラスの雰囲気になっているものを選びましょう。心情は「喜び」など。「鳥が鳴く」や「花の蕾がふくらむ」というのが「喜び」や「期待に胸を膨らませる」心情を表すことを知っておくべきですね。あとは選択肢を見るとプラスの表現になっているものがウしかないので、それだけでも解けます。
問二 線部②の直前二文が最大の手がかり。P3L2「密かにこの若い先生に親愛を感じた」上でL3「しかも先生は、私ども尋常三年生の受け持ちになってもらう」ことになったのだから、「関心」を持っているはず。「親愛」は選択肢において「親しみ」と言い換えられていることに気づけると良いです。消去法を併用しても良いでしょう。絞れます。
問三 線部③を含むP3L15~P4L11を読んで判断。特に「耳の根まで真っ赤になって」は「顔を赤くする/頬がほてる」と類義なので心情は「恥ずかしい」。物語文の理由選択なので選択肢には気持ちの言葉が入っていることが多いです。ゆえに本文では気持ちの言葉だけで選択は可能となります。意味段落を読んで判断する場合は、心に余裕のない私と、余裕がある大倉先生が対比になっていることから、余裕がない側の私が余裕のある大倉先生に対して抱く気持ちを推定しても良いでしょう。背景となる「私」の心情はP3L15~21。
問四 線部④を含P5L5~15を読んで判断します。線部④内の「心臓がとんとんと波打った」やL14「息を弾ませて」から心情は興奮(選択肢では「気持ちが高ぶる」に変換されています)。また線部の直後に「五十人の旧友の瞳がいっせいに私の上に注がれた。」を根拠に緊張も導出できます。L5「私も手を上げていたのであるが、一度も指名にあずからず、内心悔しかくてならなかった。」とあるので、これが背景となります。
問五 P6L8の文頭が接続語「ところで」なので話題転換。これ以降が一つの塊になります。L8「大倉先生は春美の抗議には何の返事も与えず、素知らぬ顔で」とあるので春美の発言を黙殺しています。理由はL14「使っちゃよいか悪いか、そんなことを今調べとるのじゃない」という発言に表れています。これに対し「黒板の続きに一際大きくおらと書き添えた」とあり、先生が「私」の答えを認めていることが分かります。春美と「私」が対比ですね。
問六 問五と関連。P6L1~14を読んで判断。「その語調は自分の意見を大倉先生にまで強いようとするかのように聞こえた。」とあり、指示語「その語調」の内容は直前の山本春美のセリフ。山本春美はP6L1~4の内容から、親の権力・財力をかさにきて好き勝手やっていたが、贔屓をしない大倉先生によってそれが出来なくなっていることが背景。春美の心情としては、不満を抱えていることが分かります。消去法を併用しても良いですが以下に示すとおり外しにくい選択肢があります。
※イ、ウの選択肢を消去法で外すには本文の手がかりが不足。イは「どんな者でも」という強意表現で外すことは(テクニック上)可能ですが、文意からは外れないでしょう。ウについても権力が失墜している背景から、選択肢の「注目されたかった」を外すのは困難。前半の「自分の存在感が薄くなった」の根拠が薄いことを根拠にすべきか?最適選択であることから解答は出るが微妙な問題だと思います。
問七 線部⑦を延長すると文頭が指示語「その豹変ぶり」。指示内容を開きましょう。「かえって~さえ」という言い回しから受ける印象をヒントに解答を選ぶ。言い回しの工夫からニュアンスを読み取るタイプの問題です。上述の通り難しいと思います。整理すると以下の通り。
<指示語「その豹変ぶり」の内容>
L17「ことごとく私の味方になったかの如く思われた」級友の態度。
<「私はかえって憎らしさをさえ感じた。」のニュアンス>
(本来は)うれしい(+)はずなのに→好意的に受け止められない
(実際は)憎らしさ(-)を感じた→嫌悪感を抱く
大人にはなんてことのない文章、問題だと思いますが、小学生にはバックグラウンドを理解する素養が足りていないことが多いので選択肢を二択までは絞れても、そこで外すことが多い問題となっています。ただ順を追って確認を取れば理解がしにくい訳ではないので今後の糧になります。娘の正答数は三問。直しは問七を除いて自力で解決できたので悪くなかったな、と思っています(笑)。
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