帚木蓬生「ネガティブ・ケイパビリティ」からの出題です。海城で出題。豊島岡高校、北大教育学部、聖マリアンナ医科大学推薦入試でも出ています。要するに高校生・大学生向けと思われます。もうこの時点で難しいですね。

ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力 (朝日選書)
問一 漢字なので省略。
問二 「浅い理解」をキーワードに読み進めると直後に「浅い理解でとどまりやすいのは、重ね合わせ的理解です。いわゆる小さな細々とした理解を積み重ねて、大きな理解を目指します。」とあるので、この具体例となっている選択肢を選びます。
問三 線部の指示語「それ」の内容は「発見的理解」なので、L33「自分で発見していくしかないかたちの理解」であり、「自然の解明の足がかりとして立てられるとしたら、自分で考えた仮説くらいです。」とあり、L37「この仮説に沿って自然を観察し、うまく説明できるかどうかを検証します~不断の検証を自ら重ねることによって、深い理解、発見的理解に到達します。」と説明されています。これを言い換えた選択肢を選びます。発見的理解には「仮説」が必要であり、それに触れている選択肢はウしかないことに気づけば瞬殺。
問四 比喩の意味をとらえましょう。指示語「そうやって得られた理解」の内容は発見的理解によって得られた「ヒトと自然の深い理解」。「地図、海図」のたとえは「人生の指針」程度の意味です。
ア × 「発見的理解/深い理解」は「未知の分野」を「宙吊り」にするので「はっきり示してくれる」ものではない。
イ × 「歴史」や「感情」の話はしていない。
ウ × 喩えなので、そのまま「世界の見取り図」という意味はありえない。
エ ○
問五 「音楽」をキーワードに意味段落(L49~62)の内容を理解します。L49「分かりたがる脳が、何やらわけのわからないものを前にして苦しむ実例が、音楽と絵画で見られます。」とあります。ゆえにL52「しかしもともと音楽など分かるはずはなく、分からなくていいのです。味わうだけです。」と説明されています。「音楽」についても「深い理解」に至るにはL38「不断の検証」が必要で、これをL59「答えを出してはおしまい、というような深みを音で追求していきます。」と表現されているので、このことを説明した選択肢を選びましょう。
問六 問われているものに注意。抽象画のどのような点が、「さらなる高みで感覚に訴える」のかを読み取ります。意味段落(L62~75)の読み取りです。スタールの具体例で考えますが、分かりにくければ消去法でも解けます。
ア × 抽象画は「現実らしさ」を生み出さない。
イ × 「錯覚」するのに「きちんと分かる」というのは矛盾している。
ウ ○
エ × 抽象画は「分かりやすく」表現できない。
問七 問四、五、六と連関。抽象画も「発見的理解」における「深い理解」の例であり、「深い理解」とは「さらなる高み」とほぼ同義。ということは、「音楽」と同じで、「分かる」のではなく「味わう」ことを続けることでより深い感動を味わえるということ。
問八 意味段落(L76~89)の理解。大学教授は質問に対してL82「即座にそれはこうこうこうですと答えました。」とあり、質問に正しく答えることを求められていると思ったわけです。これに対して大作家の本心はL86「大作家は、相手に自分が抱く疑問に参加し、一緒に考えてみる姿勢を期待したに違いなかったからです。」とあるので、これを根拠としましょう。
問九 画一的な思考に陥らないために必要な姿勢とはタイトルになっているネガティブ・ケイパビリティ。キーワードは「ネガティブ・ケイパビリティ」。最終段落をベースにまとめましょう。
<必要な姿勢/すべきこと①>
L100「謎を謎として興味を抱いたまま、宙ぶらりんの、どうしようもない状態を耐え抜く~」
L101「その先には必ず発展的な深い理解が待ち受けていることを確信して、耐えていく~」
→発展的な深い理解が待ち受けていると確信して、耐えていく③
<必要な姿勢/すべきこと②>
L38「不断に検証を自ら重ねる」
→自ら仮説を立てて不断に検証を重ねていく姿勢③
<背景/してはいけないこと>
L99「拙速な理解」
→謎に対して、既存の理解をもとにした拙速な理解/解決を求めない④
海城での出題が2018年と大問一と比べるとかなり新しいです。よって同じ文章が他校で出る可能性があるので、読んでおきたい文章ではあります。問題は最初に書いた通り、小学生向きではないということ。娘の頭上には大きな「?」が浮かんでいました(笑)。まあ、文章を読んで、自分なりに問題を解いたので良しとしました。分かりにくいが、もう少しで分かりそうといった問題は解説しましたが、サッパリなものはスルーしました。時間が経てば解けるようになるかも知れないし…
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